序章 ハンチントンが提唱する軍の理念

 ハンチントンが本書で提唱する中心的な命題は、第一にミリタリー・プロフェッショナリズムであり、第二は不偏的シビリアン・コントロールである。
 前者は、将校がプロフェッションであるとの提唱を起点に、軍の精神をプロフェッショナルな軍の倫理として定義し、軍の理念の本質に迫ろうとする一連の試みである。
 また後者は、その実現によって国家の安全保障の最大化を図ろうとする提言である。
 この両概念は、国家と軍のあるべき関係を方向付ける原型として時代を先導する不動の理論・道標となっている。

【写真:Samuel P. Huntington

1章 将校はプロフェッションである

 西洋文明が十六世紀以来築き上げて来た特有の職業概念「プロフェッション」は、伝統的に聖職者、医者、弁護士のみに限定して付与されてきた名称である。
 社会の正常な機能を維持するために必要な高度の知識・技能を身に付け、高い社会的信望と重い責任を担うこれら3業種に加え、ハンチントンは第2次大戦後に新たにここに軍の将校を加えた
 戦争の科学の急激な進歩がもたらす国際紛争の激化と、クラウゼヴィッツの「戦争の本質の2元性」の概念を結び付け導き出したハンチントンの革新的な識見である。


【肖像画:Carl von Clausewitz

2章 軍の精神-プロフェッショナルな軍の倫理

 軍に固有の側面もしくは軍の機能上の側面を表す「軍の精神」が社会科学方法論に依りプロフェッショナルな軍の倫理として定義され、その帰結として「軍の理念」の本質に迫ろうと試みられる。
 続いて、シビリアン・コントロールに関する基礎理論をベースに、国家の軍事的安全保障を最大化する不偏的シビリアン・コントロールの概念が提唱される。
 それは、軍人のプロフェッショナルな姿勢と行動が最もよく発現するように、軍人集団と文民集団の間の政治権力を均衡させ、その結果軍は国家の従順な召使いとなる。

【写真:Helmuth von Moltke

3章 ドイツとアメリカ-新時代の創成と伝承

 ナポレオンに壊滅的敗北を喫したプイセンは、その天才に対抗すべく、来るべき近代戦を視野に入れた組織的陸軍の構築を目指し、シャルンホルストを軸に立ち上った。十九世紀の半ばに至って、参謀総長モルトケがクラウゼヴィッツの戦争の二元性の理論を指標として、この改革に対する回答をドイツ陸軍の参謀本部理論として大成させた。
 その成果を南北戦争後のアメリカは、シャーマンを中心に、社会からの厳しい排斥と孤立、徹底した予算縮小に堪えながら真摯に学び取り、ミリタリー・プロフェッショナリズムを我が物ものとした。


【写真:William T. Sherman

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