序章で示したように、ハンチントンは『軍人と国家』の本論(第一章 プロフェッションとしての将校職)に入ると直ちに、現代の将校職はプロフェッションであることを明確に宣言している。
現代の将校団(officer corps)はプロフェッショナルな団体であり、現代の将校(military officer)はプロフェッショナルな人間である。おそらくこのことが本書の最も基本的な主題である。
プロフェッションというのは、高度に専門化した特性を備える特定部類の機能集団のことを謂う。彫刻家、速記者、企業家、コピーライターは、それぞれすべて異なった機能を持つ人たちであるが、これらの機能は本質的にプロフェッショナルな特性とは言えない。しかるに現代の将校の特性は、本質的にプロフェッショナリズムであり、それは医者や弁護士の特性と軌を一にする。
将校職がプロフェッションであるとするハンチントンのこの確信的な主張には、プロフェッショナリズム全般に関する彼自身の広範な体系的、網羅的な研究の裏付けが存在している。詳細は省略するが、原著の巻末の注記に掲げられているプロフェッションに関する参考文献は、イギリスにおけるプロフェッションの歴史、プロフェッションの定義、さらにプロフェッショナルな教育、倫理等多岐にわたっている。加えて、軍に関するマックス・ウェーバー流の社会学的研究も挙げられているが、後述の「2章 軍の精神-プロフェッショナルな軍の倫理」において、ウェーバーの理念型の概念が「軍の精神」を定義するのに用いられている。
「現代の将校職はプロフェッションである」とするハンチントンの提唱を、以下の節に分け要点を絞って紹介して行きたい。
1-1.プロフェッションの概念
1-2.ハンチントンが示すプロフェッションの定義
1-3.ミリタリー・プロフェッションの提唱