ハンチントンは、特別なタイプの職業(vocation)としてのプロフェッションを定義するために、その際立った特徴として、専門知識・技能(expertise)、責任(responsibility)、および団体性(corporateness)の3項目を挙げている。以下にその要点を紹介しよう。
専門知識・技能
プロフェッションを特徴付ける第一の要件、専門知識・技能をハンチントンは次のように示している。
プロフェッショナルな人間は、ある特定の重要な人間活動の分野において、専門的な知識と技能を有するエキスパートである。
その専門知識・技能は長い教育と経験によってのみ身に付けることができるものである。それはプロフェッショナルな能力を評価するための客観的基準の基礎となるものであり、プロフェッションを素人と区別し、プロフェッションの構成員の相対的能力を評価することを可能とするものである。
このような基準は普遍性があり、各専門分野の知識と技能に固有のものであり、時間と場所にかかわりなく普遍的に適用できるものである。
そしてその基本的は特質を次のように示している。
通常の技能またはクラフトは現在だけに存在するものであり、過去にあったこととは無関係に、現存する技術を学ぶことによって習得できる。しかしプロフェッショナルな知識は本来知的なものであり、書きものとして維持、保存することが可能である。
そしてそのプロフェッショナルな知識は歴史に裏打ちされており、その歴史に関する知識はプロフェッショナルな能力修得にとって必須の要件となる。
また、プロフェッショナルな知識と技能を発展、継承するためには、研究と教育の制度が必要である。プロフェッションの学術研究部門と実践部門の間の連携は定期刊行物、会議、そして構成員の実践と学習の交互実施を通して維持される。
そのため社会の中におけるその位置付けは、
プロフェッショナルな専門知識・技能はまた、通常のトレードには欠けている次元的な広がりを持っており、社会全体の文化的伝統の一部を構成している。
プロフェッショナルな人間はこのより幅の広い伝統―彼自身もその構成要素の一部である―に通暁していなければ、自身の技能をうまく利用することはできない。医者、弁護士、それに聖職者という高度の知識を必要とするプロフェッションは、一般に、社会の全学習体系の中に統合化された一部であるという位置付けの下に「学ばれる」ものである。
その結果、現在の医師や弁護士の養成システムに見られるように、プロフェッショナルな教育は二つのフェーズから成る―「社会の一般教育機関によって実施される、幅広い一般教養的、文化的な基礎知識を与えるものと、プロフェッション自体が用意する特別な機関によって実施されるプロフェッションの専門化した技能と知識を与えるもの」である。
責任
プロフェッションを特徴付ける第二の要件としての責任について、ハンチントンはまず、プロフェッションの基本的な社会的責任を次のように定義している。
プロフェッショナルな人間は現役で活動しているエキスパートであり、社会的環境の場で働き、健康、教育、正義の促進といった社会が正しく機能するために必要不可欠な務めを果たす。
すべてのプロフェッションのクライアントは、個人的レベルでもまた団体的レベルでも、社会である。・・・(中略)プロフェッショナルな人間が果たすべき務めは本質的かつ普遍的な特性を有しているため、また自らは独自の技能を独占的に保有しているため、社会から要請されたときは、その務めを確実に果たすことが彼の必須の責任として課せられている。
この社会的責任が、プロフェッショナルな人間を、単に知的な技能だけを持つその他のエキスパートから区別することになる。
さらにハンチントンは、プロフェッショナルの挙げる成果に対する経済的報酬や、社会とプロフェッションの全般的な関係について次のように述べている。
経済的報酬は、プロフェッショナルな人間の、プロフェッショナルな人間としての、主たる目的とはなり得ない。従って通常はプロフェッショナルの報酬は、自由市場での交渉で決定されるのはほんの一部の場合に限られ、元来はプロフェッショナルな慣例と規則によって規定されるものである。
プロフェッショナルの基本的な務めの成果は通常の経済的報酬の期待値に還元して規定できるものではないが、成果を表現するためには、社会に対するプロフェッションの関係を律する何らかの趣旨表明が必要となる。プロフェッショナルな人間とクライアントの間の意見対立や、プロフェッション内の仲間同士の対立が起こるため、通常そのような趣旨表明として明確に表現されたものがぜひ必要である。
その結果、プロフェッションが社会との関係において占める位置付けは、
かくしてプロフェッションはある特定の価値観と理念を具備した一倫理的部門となり、そしてその価値観と理念は素人とのかかわり合いにおいてプロフェッショナルを導く指針となる。この指針は一連の非成文化規範としてプロフェッショナルな教育制度を介して伝承されるか、あるいはプロフェッショナルな倫理に関する成文化規範として体系化される。
独自の特定の価値観と理念を具備し倫理的責任を負う部門、これがプロフェッションを特徴付ける基本的な一特質である。
団体性
プロフェッションを特徴付ける第三の要件としての団体性について、
プロフェッションの構成員は共通して、自らの属するプロフェッションの組織的統一性を意識し、同時に自らは素人とは一線を画する集団であると自覚している。
この共同体意識は、プロフェッショナルな能力を修得するのに要する長期にわたる修業と訓練、活動時における共通の絆、そして自らが帯びている固有の社会的責任に、その起源を持つものである。この連帯感は、プロフェッショナルな組織が自らのプロフェッショナルな能力基準を正式に認定、運用し、そしてプロフェッショナルな責任基準を確立、実行する場合、おのずと顕れるものである。
かくしてプロフェッショナルな組織の会員であることは、その身に付けた固有の専門知識・技能と、その担った特別な責任によって、プロフェッショナルなステータスを表す指標となり、プロフェッショナルな人間を素人から公然と区別することになる。
このプロフェッショナルな共同体意識の当然の帰結として、プロフェッションの構成員が守らなければならない極めて重要な行動規範が生まれる。
プロフェッションの利益を守るためには、プロフェッションの構成員が自身の能力と関連のない領域でプロフェッショナルな能力を利用するのを禁じなければならない。また同様に部外者が他の分野で示した実績または特質を口実にして、プロフェッショナルな能力にクレームをつけることに対して、自身を守らなければならない。
以上プロフェッションの一般的定義を示したあと、ハンチントンは引き続き、現代の軍人がそのプロフェッションの主要な基準を満たしていることを論証して行く。